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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)274号 判決

大阪府堺市車之町東3丁1番31号

原告

日亜精密工業株式会社

代表者代表取締役

上田一男

訴訟代理人弁理士

杉本丈夫

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 麻生渡

指定代理人

長沢正夫

野口勇

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者が求めた判決

1  原告

特許庁が、昭和62年審判第21392号事件について、平成3年9月25日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和58年10月19日、意匠に係る物品を「ベアリング用保護板」とし、意匠の態様を別紙図面のとおりとした意匠につき、意匠登録出願をした(昭和58年意匠登録出願第45498号)が、昭和62年9月30日に拒絶の査定を受けたので、同年12月7日、願書及び願書に添付した図面の「意匠に係る物品」の欄を「ミニチュアベアリング用保護板」と(図面そのものの補正はない。別紙図面のとおり。)、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄を「本物品は、弾性を有するプラスチック材から成る環状のミニチュアベアリング用保護板であり、その外径は約3.4mmφ、内径は約2.6mmφ、厚さは約0.2mmである。本物品は参考断面図に示す如く、その外周端縁をミニチュアベアリングの外輪の両端部内周面に形成した保護板嵌着溝内へ嵌合することにより、外輪へ固定され、ボールを保護する。」と補正する(以下、この補正を「本件補正」という。)とともに、拒絶査定不服の審判の請求をした。

特許庁は、これを同年審判第21392号事件として審理したうえ、平成3年9月25日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年11月5日、原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  請求人が主張するように本願意匠は極めて小さいものであり、審判請求の理由及びそれに添付された実物参考見本によれば、この大きさでは肉眼で視認できるのは円盤状リング形であることだけで面取りの態様等については肉眼では視認できない。

(2)  また、その微細な寸法の物品に表された外周端縁等の形状にこそ創作があるという請求人の主張は主に作用効果に関するものであり、視覚を通じて美感を起こさせる意匠上の特徴について述べたものではない。

(3)  意匠の実際の寸法を50倍に拡大して表した添付図面から認定できる態様がこの種の分野においては新規なものという請求人の主張も、例えば、外国雑誌Product Engineering 1970年3月16日号7頁所載のベアリングの押さえ輪、特許庁発行の公開実用新案公報所載昭和54年実用新案出願公開第179370号「斜交伝動装置における伝動輪保持装置」の第2図、11の輪の意匠に見られるように、使用の態様に多少の差異があっても、ほぼ同じ態様のものが周辺の資料に数多く見られ、この種の分野に属する通常の者が容易に着想できるものである。

(4)  このように、本願の意匠は、周知の円盤状リング型の形状であって、これを単にベアリング用保護板の意匠に利用したまでのものであり、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものと認められるものであるから、本願意匠は、意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するものであり、登録を受けることができない。

第3  原告主張の審決取消事由

審決の認定、判断には以下のとおりの誤りがあり、その結果、誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1

(1)  審決は、「請求人が主張するように本願意匠は極めて小さいものであり」としているが、本願意匠を極めて小さいものであるというのは誤りであり、また、請求人である原告がそのように主張したこともない。

本願意匠の「意匠に係る物品」は、外径が約3.4mmφ、内径が約2.6mmφ、厚さが約0.2mmであるから、請求人(原告)は、審判請求書において、「本願意匠は、その厚さを約0.2mmという極めて薄いものにし、」と述べたのであって、3.4mmφもの外径を有する物品を極めて小さいものであるということはできない。

被告は、本件補正によって書き改められた願書の「意匠に係る物品の説明」に記載されている寸法によって、本願意匠に係る物品の大きさが特定されたと主張するが、この記載は、意匠に係る物品である「ミニチュアベアリング用保護板」の中の代表的なものの寸法を示すだけの意味しかないものである。ミニチュアベアリングとは、外径が約9mmφ以下のベアリングをいうのであるから、本願意匠に係る物品には、外径が約3.4mmφのものばかりでなく、外径が約9mmφ以下のミニチュアベアリングに使用される保護板のすべてが含まれる。そして、このように外径寸法の大きいものから外径寸法の小さいものまでを含む物品に係る意匠の場合には、出願に係る意匠を大きい外径寸法のものから小さい外径寸法のものまで含むものとして把握し、その上に立って出願に係る意匠の登録の可否を判断するのが審査及び審判における確立された実務手続となっており、現に、ベアリング用保護板についても、このような手続で、その大きさが特定されないままに登録に至っている意匠が、少なからず存在する。審決は、この確立された実務手続にも反する。

(2)  審決は、本願意匠が上記「極めて小さいものである」との誤った認定に立って、これにつき、「肉眼で視認できるのは円盤状リング型であることだけで、面取りの態様等については肉眼では視認できない。」と認定しているが、誤りである。

この認定は、審決自体「審判請求の理由及びそれに添付された実物参考見本によれば」といっていることからも分かるように、本願意匠を把握するためにもっとも重視すべき願書の添付図面を完全に無視し、これについて検討を加えず、主として実物参考見本から把握された意匠についての認定である。したがって、この認定は、本願意匠についての認定であるとはいえず、本願意匠の登録の可否の判断の基礎とすることのできないものである。

一方、本願意匠の面取りの態様等は、本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)であれば、願書に添付された図面から容易に把握できるものであり、このことは、当該図面を見れば明らかである。したがって、審決の上記認定は誤りである。

(3)  仮に、審決の上記認定が正しいとするならば、本願意匠の要旨は、本件補正により変更されたことになるというべきである。本件補正は、願書に添付された図面に直接変更を加えることはしていないものの、意匠に係る物品の大きさを特定することにより、意匠が「実質的に面取りのない円盤状リング型」であると見られる事態を生じさせ、図面に直接変更を加えたのと同じ効果を生み出しているからである。そうだとすれば、審決は、本件補正が意匠の要旨を変更するものとして意匠法52条で準用する特許法159条1項の規定により却下しなければならないのにこれを看過して、補正後の意匠につき判断したことになり、審判手続上の法令に違反したことになる。

2  取消事由2

審決は、本願意匠の特徴として原告の主張した点につき、「その微細な寸法の物品に表された外周端縁等の形状にこそ創作があるという請求人の主張は主に作用効果に関するものであり、視覚を通じて美観を起こさせる意匠上の特徴について述べたものではない。」と認定しているが、誤りである。

原告は、審査・審判の過程において、本願意匠が美観を具えたものであることを十分に主張している。確かに、本願意匠は、審判請求書の中でも述べているとおり技術的内容を主眼として創作された意匠の部類に属するものではあるが、機能上必然的な物品の形状に係る内容(薄い円盤状リング型とした点)に加えて、形状としての独自の処理(外周端縁を独特なテーパ形状とした点)が施されており、これが視覚を通じて見る人に十分な美観を与えるものとなっているのである。

3  取消事由3

審決は、さらに、本願意匠の態様がこの種分野においては新規ものであるとの原告の主張に対して、公知資料を引用し、本願意匠の態様とほぼ同じ態様のものが周辺の資料に数多く見られると認定しているが、誤りである。

本願意匠においてはその外周端縁にテーパ面が形成されているの対し、審決が引用しているものを含め公知意匠のものはその外周端縁にテーパ面のない単なる円盤状リング型であって、本願意匠のようなテーパ面の形成されたものは、全く存在しない。

4  取消事由4

以上のとおり、審決は、上記「肉眼で視認できるのは円盤状リング型であることだけで、面取りの態様等については肉眼では視認できない。」との誤った認定に基づき、本願意匠の要部と公知意匠との対比判断をしないままに、本願意匠は、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に意匠の創作をすることができたものとの誤った判断に達したのである。

第4  被告の反論

審決の認定、判断は正当であり、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がない。

1  取消事由1について

(1)  本願意匠に係る物品は、原告が本件補正により、「意匠に係る物品」を「ベアリング用保護板」から「ミニチュアベアリング用保護板」に補正した際、それまで特定されていなかった大きさを「意匠に係る物品の説明」において、「その外径は約3.4mmφ、内径は約2.6mmφ、厚さは約0.2mmである。」と特定したのであって、この特定された寸法からして、本願意匠が極めて小さいものであることは明白である。現に、原告自身、審判請求書において、「尚、本件意匠の出願日前には、本願意匠のような外径が約3.8~4.0mmφのミニチュアベアリングに使う、外径が約3.4mmφ程度のミニチュアベアリング用保護板は全く存在せず、公知のベアリング用保護板は外径が約5mmφ以上のものばかりであります。このように、本願の意匠は、ミニチュアベアリング用保護板の厚さを約0.2mmという極めて薄いものにし、・・・」等と述べて本願意匠が小さいものであることを強調しているのである。

原告は、外径が約9mmφ以下のベアリングをミニチュアベアリングというのであるから、本願意匠に係る物品には、外径が約9mmφ以下のミニチュアベアリングに使用される保護板のすべてが含まれる旨主張しているが、失当である。

補正された「意匠に係る物品の説明」には、前記のとおり本願意匠の大きさが具体的かつ限定的に特定されており、この大きさがミニチュアベアリング用保護板の代表的なものの寸法を示すとの説明は一切なく、まして、外径が約0.9mmφ以下のミニチュアベアリングに使用される保護板のすべてがそこに含まれることなど全く述べられていない。

被告は、原告が主張するところの確立された実務手続については知らない。しかし、意匠は物品を離れてはありえず、物品は性質上大きさを伴う概念であるから、意匠を把握するに当たっては、大きさが明確にされていればその大きさのものとして判断すべきは自明の理である。大きさにつき特に説明がなければ、その物品の常識的な大きさとみなすことにより判断されるのである(当業者が大きさを理解できないためその意匠を認識することができないときは、意匠に係る物品の大きさを願書に記載しなければならない。意匠法6条4項)。たまたま大きさが明確でないまま登録されることがあるとしても、それは、そのものとして特別な大きさのものでないとの判断が最終的になされたからにほかならない。原告のいう大きさが特定されないままに登録された「ベアリング用保護板」の場合は、極小の大きさのものではなく普通の大きさのものであるとの判断が最終的になされ、これに基づき意匠登録が行われたのである。審査・審判の際に大きさが明示されれば、その大きさに基づいて審査され、その大きさが肉眼で視認できないときは、これを理由に出願が拒絶されるのが審査・審判の実情である。

(2)  登録の可否の判断の対象となる意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面から把握された意匠であり、同図面が重視されなければならないことは、原告の主張するとおりである。しかし、出願意匠の内容又は範囲は、同図面だけで判断されるわけのものではなく、「願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな型若しくは見本により現わされた意匠に基づいて定められなければならない。」(意匠法24条)のであり、最終的には、これらの資料の総体から決定されるべきものである。審決は、これに基づき、添付図面をも含む出願書類の全体と実物参考見本とから本願意匠を把握したのであって、何の問題もない。

本願意匠の大きさが上記のとおりであることを前提に添付図面を見れば、原告が強調する面取りの態様等は、約50倍の拡大図に該当する同図面においては肉眼で視認できるものの、実際の大きさの意匠においては肉眼では視認できないことが明らかである。

(3)  本件補正は、それまで不明確であった大きさを明確にしたことだけであり、このような補正が意匠の要旨の変更に当たらないことは明らかである。

2  取消事由2について

原告は、審決が、原告の主張するところは主に作用効果に関するものであるとして、本願意匠の有する美観を認めないのは誤っている旨主張する。しかし、原告引用の審決の説示からもわかるように、審決は、添付図面(約50倍の拡大図となる。)の上では認められる面取りの態様等を前提にした場合の意匠の美観を否定しているわけではなく、本件ではそのような美観を問題にすることができない旨を述べているのである。すなわち、審決は、本願意匠の実際の大きさが前述のとおりであるため、原告が創作上の特徴であると強調する外周端縁等の形状までは肉眼で視認できず、したがって、これを視覚を通じて美観を起こさせる意匠上の特徴とすることはできないといっているのであり、審決のこの認定に誤りはない。

3  取消事由3について

意匠は、肉眼で視認できる美感を保護する制度であるから、どのような形態であっても、肉眼で視認できないものは、意匠としての評価の対象にならず、意匠との関連においては存在しないのと同じになる。すでに述べたとおり、原告が強調する外周端縁の態様は、本願意匠の大きさが前述のとおりしかないため肉眼では視認できない。そうだとすれば、本願意匠は、原告が強調する外周端縁の態様は存在しないものとして把握されなければならず、このようにして把握された本願意匠は、周知の円盤状リング型の形状であって、この態様とほぼ同じ態様のものは周辺の資料に数多く見られる。審決の認定に誤りはない。

仮に約50倍の拡大図に該当する添付図面で表示されているところで本願意匠を把握しても、そこに見られる面取り等の程度の態様では創作性がなく、意匠法3条2項に該当するのであり、このことは、審決の理由に示されている。

4  取消事由4について

原告は、審決が本願意匠の要部と公知意匠との対比判断をしていない旨を主張するが、審決が示した公知意匠は、本願意匠が周知の形状に基づき当業者が容易に創作することができる意匠であるということを示すための例示にすぎず、意匠法3条1項3号を拒絶理由としていない以上、両者を対比判断する必要はない。

第5  証拠

本件記録中の書証目録の記載を引用する(書証の成立については、いずれも当事者間に争いがない。)。

理由

1  取消事由1について

(1)  前示争いのない事実の示すとおり、本件補正により、願書及び図面の「意匠に係る物品」の欄は「ミニチュアベアリング用保護板」と、「意匠に係る物品の説明」の欄は、「本物品は、・・・その外径は約3.4mmφ、内径は約2.6mmφ、厚さは約0.2mmである。」と補正されたことが明らかである。このように願書中の「意匠に係る物品の説明」において、本願意匠に係る物品の大きさを具体的かつ限定的に表示した以上、補正後の願書の記載及び願書に添付された図面によって把握すべき本願意匠は、「その外径は約3.4mmφ、内径は約2.6mmφ、厚さは約0.2mmである」ミニチュアベアリング用保護板に係るものとして特定されたというほかはない。

そして、乙第3号証によれば、原告は、審判請求書において、「本願意匠は、手続補正書によってその「意匠に係る物品」をより明確にしております様に、外径が4mmφ程度のミニチュアベアリング用保護板に関するものであります。」、「本願意匠の出願日前には、本件意匠のような外径が約3.8~4.0mmφ程度のミニチュアベアリングに使う、外径が約3.4mmφ程度のミニチュアベアリング用保護板は全く存在せず、公知のベアリング用保護板は外径が約5mmφ以上のものばかりであります。」と述べ、本願意匠に係るミニチュアベアリング用保護板は、外径が4mmφ程度のミニチュアベアリングに使用されるものであって、その外径は約3.4mmφ程度であり、それは、外径が約5mmφ以上の公知のベアリング用保護板とは明白に区別されるべきものであることを自認しているのであるから、本願意匠に係る物品には外径が約9mmφ以下のミニチュアベアリングに使用されるものすべてが含まれるとの原告主張は採用できない。

このように本願意匠は、外径が約3.4mmφ程度のミニチュアベアリング用保護板に係るものであり、一方、乙第7号証の1・2、第8号証の1ないし3によれば、わが国で販売されているベアリングは、外径が最大2430mmφのものから最小2.5mmφのものまであることが認められ、これによれば、本願意匠に係る保護板が極小の部類に属するものであることは明らかである。したがって、審決が「本願意匠は極めて小さいものであり、」と述べたことに誤りはない。

(2)  原告は、添付図面によれば面取りの態様等を肉眼で視認できる旨主張する。

しかし、本願意匠の添付図面(別紙図面)が本願意匠の大きさを約50倍に拡大して示した図面であることは、上記本願意匠に係る物品の寸法と同図面の寸法を対比して明らかであり、これによって視認できるところがそのまま、上記大きさの本願意匠に係る物品において視認できないことは当然であり、本願意匠に係る物品の大きさが上記のとおりであることを前提に同図面を見れば、その面取り部分は保護板の外径の約60分の1の幅で設けられているにすぎず、外径が約3.4mmφである本願意匠において、面取り部分の幅は計算上約0.057mmとなり、審決の述べるとおり、「肉眼で視認できるのは円盤状リング型であることだけで、面取りの態様等については肉眼では視認できない。」としかいいようのないことが、明らかである。

原告はまた、審決の「審判請求書の理由及びそれに添付された実物参考見本によれば」との文言をとらえて、審決が本件補正後の願書の添付図面を完全に無視した旨主張するが、審決が、願書の記載及び添付図面により本願意匠を把握したうえで、審判請求書において原告が主張した点及び審判請求書に添付して原告が提出した実物参考見本を参照し、前記認定に至ったものであることは、審決の理由の記載からおのずと明らかである。

原告の審決は確立された実務手続に反するとの主張は、前示のとおり本願意匠に係る物品の大きさが特定されたことを無視する主張であって、採用できない。

(3)  前示当事者間に争いのない事実によると、本件補正は、意匠を記載した図面そのものに変更はなく、「意匠に係る物品」と「意匠に係る物品の説明」の欄を補正し、意匠の対象を出願当初の「ベアリング用保護板」に含まれていた「ミニチュアベアリング用保護板」に減縮し、その大きさを前示の寸法のものに特定したものであるから、意匠の要旨を変更した補正に当たらないことは明らかである。

原告は、審決の認定によると、意匠が「実質的に面取りのない円盤状リング型」と見られる事態が生じたというが、出願当初の本願意匠に本件補正後の大きさの保護板が含まれていた以上、面取りの態様等が視認できないものも出願当初から含まれていたのであって、本件補正によってはじめて「面取りのある」ものから「実質的に面取りのない」ものに変更されたわけではない。

手続上の違法をいう原告の主張は採用できない。

2  取消事由2ないし4について

本願意匠が、審決認定のとおり「肉眼で視認できるのは円盤状リング型であることだけで、面取りの態様等が視認できない」ものである以上、それが審決引用の周知意匠例にも示されている周知の円盤状リング型の押さえ輪等から当業者が容易に想到することができる程度のものであることは明らかであり、本願意匠が意匠法3条2項に規定する意匠に該当するとした審決の判断は相当である。そして、このことからすれば、原告が取消事由2ないし4において主張するところはいずれも理由がなく採用できないことも明白である。

3  よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 裁判官 三代川俊一郎)

別紙

〈省略〉

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